装丁のイラストに引かれるのが一番なのだが、作品もイラスト的である。
実にカラフルな感じがして「太陽の塔」に引き続き、「宵山万華鏡」を読んでみた。
こちらは、ハードカバーの装丁に魅了され、その時から目をつけていたのだが、文庫本が中古で出回るのを待って、いよいよ昨日一気に読み込んだ。
気になったのは、作品中の山田川という美術監督がイマジネーションを膨らませて、作品を練り上げるシーンなのであが、それが装丁にも描かれており、「まねきねこ」や「信楽焼の狸」が描かれている点である。
このシーン、一度見たことがある。筒井康隆氏の「パプリカ」という小説で、その中のオタク系の人間の夢の中がこのようだったはずである。この作品もイラスト的だと思ったが、実際に映画にもなっていてそれを見た影響もあるかもしれない。もう一度映画を見てみてもいいがそれ程面白かったわけではなかったのでよしておこう。
そんなことより、何かこう、必ず狂気的な想像物の中には「まねきねこ」や「信楽焼の狸」が描かれている点が気になのである。日本人の中にある、何か怪しく惹かれるものの典型なのかなと考える。外国人もそうだったらさらに面白い。
もう一つは、初めてのはずなのに今までに見たことがある「既視感」をテーマにした作品だったことも上記のことが初めから企まれていたようで私を不安にさせた。
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私は奇妙な一日を過ごした。
既視感というのは、これまでにも幾度か味わったことがある。「いつか昔、この場面を夢で見た」というような感じがまざまざとして、目前の風景がふっと遠のくような、不思議な感触がある。その朝からの半日は、その既視感が延々と続いているようなものだった。
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さて、私には山田川の美術監督としてのセリフが気になっている。
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「これができないと我慢できないの!この鼻孔から溢れがちの絢爛たるイメージをどうしてくれるの!憤懣やるかたないのよ!私、脳味噌がもうパンパンよ!」
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それに対し、反抗的な美術スタッフの言葉、
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そんなけっこうなものではない。あれは妄想だ。しかも湧き上がる妄想に脈絡がない」
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美術監督って統合失調症的なのか・・・。私の中では一時期その狂気にはまっていた安倍公房氏のことが上記の全ての帰結点として浮かび上がってくるのだが。「カーブの向こう」という短編面白かったな。
それにしても以前、NHK総合の番組・「仕事の流儀」が、美術監督の種田陽平氏だった回があり、私が好きだった映画「マジックアワー」が氏の作品であることが分かり、美術監督に憧れた。私はストーリーよりも視覚的な方にどうも憧れるようだ。
もしも人生をやり直すとしたら、私は美術監督やってみたい。娘には暗にこの道に入れるように関連本を並べて準備しといてあげようかな。
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