2016年4月22日金曜日

伸びきったゴムからあばばばば

中原中也氏の詩集をさっそく読み返し、昨日、気になっていた「伸びきったゴム」の箇所を探し出した。


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(前略)

弾力も何も失くなつたこのやうな思ひは、

それを告白してみたところで、つまらないものでした。

それを告白したからとて、さつぱりするといふやうなこともない、

それ程までに自分の生存はもう、けがらはしいものになつてゐたのです。

(中略)

もはや人の癇癖なぞにも、まるで平気である程に僕は伸び朽ちてゐたのです。

尤も、嘘だけは癪に障るのでしたが・・・・・・・・・・・・

人の性向を選択するなぞといふことももう、

早朝のビル街のやうに、何か兇悪な逞しさとのみ思へるのでした。


―――――僕は伸びきつた、ゴムの話をしたのです。

だらだらと降る、微温の朝の雨の話を。

ひえびえと合羽に降り、甲板に降る雨の話なら、

せめてもまだ、爽々しい思ひを抱かせるのに、なぞ思ひながら。

(攻略)

中原中也全詩集「秋を呼ぶ雨」より
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それから今度はなぜだか芥川龍之介氏「あばばばば」が読みたくなり、




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「あばばばばばば、ばあ!」

保吉は女を後ろにしながら、我知らずにやにや笑い出した。女はもう「あの女」ではない。度胸の好い母の一人である。一たび子の為になったが最後、古来如何なる悪事をも犯した、恐ろしい「母」の一人である。この変化は勿論女の為にはあらゆる祝福を与えても好い。しかし娘じみた細君の代りに図々しい母を見出したのは、・・・・・保吉は歩みつづけたまま、茫然と家家の方を見上げた。空には南風の渡る中に円い春の月が一つ、白じろとかすかにかかっている。・・・・・・・・・

芥川龍之介全集「あばばばば」より一部抜粋
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そして、再度、中也の別な詩へ帰っていく。



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僕は煙草に火を点けて、去りゆく光を眺めてゐた。

アババババ、アババババ、

中原中也全詩集「未発表詩篇」より
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そうして僕の中の伸びきったゴムはまた何故だか弾力を帯びてくるのだ。





















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