2016年6月1日水曜日

仏教と歴史 ~ナポレオン編②~

池田先生は過去に何度もナポレオンを紹介されていますが、生涯を一読してよく理解できました。先生もまたナポレオンのごとくあらゆる知性に恵まれ、ナポレオンが民衆の心をつかまんとしたごとく、それを宗教(人生への基本的な法則を示す)によって達成しようと絶えず努力されていることを。近代ナポレオンも目指した世界連邦、将来はその方向へ向かうのでしょう。



戴冠式の栄光から、そして没落へ・・・ (赤字が成功へ、黒字が失敗への因)

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それよりももっと大きい陥穽は、成功のともなう本人心内の変化だ。慢心と油断だ。

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適材適所ということが人類の要求だ。人材抜擢ということが古今の希望だ。それをもっともめざましく代表したるところに彼の人気があった。一兵卒より元帥をつくり、一属官を一躍して大臣にした彼の人材登用主義が、革命フランスの理想だ。

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彼が少年以来のぞんだものは、ほとんどこれを達した。しかるににぎってみたらそれはなんという違ったものであったろう。金と思ってつかんだのは、泥であったのか。声名も富貴も王冠も、これだけの努力のかいのあるものなのか。大きい失望、ものたりなさ。それが青年貧窮の日のように重く、彼の頭を圧してきた。
ただ彼は東洋を思うときだけ、喜色満面少年のように快活であった。

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ナポレオンの帝室費はブルボン王に比して四分の一しかかかっていなかった。それがナポレオンの強味であった。彼は一生ぜいたくということに興味をもっていなかった

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彼は細事に注意深かった。それが彼の大事業をした秘訣であった。

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泉のわくように知恵が日夜、あの大きい頭のなかからわきでていたものらしい。しかもそのわいた考えをことごとく自分でこまかく仕上げる力をもっていた。

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彼の成功と失敗との根本原因がひそんでいた。彼は人間の弱点を利用した。人間の金銭欲と、名誉欲とを十二分に利用した。そうしてすべての人がそれで思うように動くのを見て、あまりにその一方に片よりすぎてゆきつつあることに気がつかなかった。

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彼は利欲権勢以外の、ある清純な理想を大衆の前に標置して、小我以上の大我に向かって天下国民の注意を集めてゆくことを、しだいにおろそかにするようになった。

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こうして一方には帝制を維持せんとして思想弾圧をおこない、ために全欧の自由主義者の痛憤を買って新しき国民覚醒運動の端をひらいたように、他方には誤った経済政策を強行せんとして大衆の生活を圧迫し、しだいに彼にたいする謳歌の声が呪詛に変わっていった。

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四十年の人生を振り返ってみる。なんという寂寞たる天地だ。小人物とあきめくら。あおいで宇宙の幽玄に参入し、伏して全人類の運命を思う者はいないのか。この乱雑な人間界に秩序を与え、悠久な人類史に基本的な法則を提示することが、人間の一番大きい仕事だということを悟るやつはいないのか。

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「前進!」
なにをぐずぐず思い迷うのだ。おまえのゆく道はただ一本だぞ。前へ前へと進んで今日まできたのだ。いまさらここで踏みとどまって満足するのか。攻めるのが守る唯一の道だ。停止は自滅だぞ!戦え!戦え!前へ前へと出て戦え!

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逆境に処してはじめて人のまことを知る。彼は利欲をはなれて彼を愛していたのはだれだれであったかをはっきりと知ることができたのだ。

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彼はほんとうの休息をしていない。人間のほんとうの休息は、宗教と家庭と芸術だ。その一つだに彼は持っていないではないか。永遠の実在に一身を委していっさいを忘れる宗教も、地上の純愛に陶酔して世累から解放される家庭も、一曲の神韻に世外の人となり、一幅の名画に登仙する芸術的歓喜も、はた一抹の清香に酔い、一輪の野花に心おどる自然愛も、彼にはなかったのだ。

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彼は口授しているときは、なにものも耳にはいらず目にはいらなかった

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自分の最大の敵は自分自身であったのだ。自分が自分の悲惨なる運命の原因であった。

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彼が三つのものを多量にそなえていたということだ。
一つは、分析的能力で、
一つは、総合的能力で、
いま一つは、非凡な実行力だ。

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ある哲人のいったように、「自己心内の恐怖心を克服したる人を真の貴人とす」である。われわれはいろいろの希望と計画をもっている。しかし危険の恐怖のために、とうとうこれを実行せずして死んでゆく。なんびとといえども、自己心内の恐怖心を克服したら、すばらしい仕事ができるのだ。

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「おれは頭のなかにたくさんの引き出しがあって、一つの仕事をはじめると、ほかの引き出しはちゃんとしめてしまうのだ。それがすむと、その引き出しはしめて、すぐまたほかの引き出しをあけるのだ。だから引き出し同士がまざることは決してないのだ。そうして眠るときは引き出しをみんなしめて寝る」

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